富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧

総説論文「下丘における難聴に関連した神経活動変化」の公開 Review article "Hearing loss-related altered neuronal activity in the inferior colliculus" is published!

2024年5月20日付けで伊藤と小野宗範博士(金沢医科大学)の共著による総説論文がHearing Research誌から出版されました。なお、2024年6月末までこのリンクから論文を読むことができます。この論文はスペイン・サラマンカ大学の神経科学講座の教授であったMig…

【各論・中枢神経系】間脳は脳幹?

間脳は脳幹に含めませんか。 という質問がありました。 昔の本ではこのあたりがあいまいで、本によって異なる分類がされていたことがあります。現在は脳の発生のメカニズムがかなり明確にわかってきた結果、間脳は脳幹に含めるべきでない、ということができ…

【各論・中枢神経系】海馬CA2の機能

海馬の神経回路で、CA2に役割等があるのか気になりました。 という質問がありました。 CA2は小さい領域なので、これまではほとんど研究が行われてきませんでしたが、最近になって色々な研究が出てきているようです。まず、神経回路ですが、CA2もCA3同様歯状…

【各論・中枢神経系】三叉神経中脳路について

三叉神経中脳路は三叉神経運動核に投射する線維が走行しているのですか? という質問がありました。 筋紡錘の反射(膝蓋腱反射みたいなもの)経路という意味では運動核に投射するといえます。感覚伝導路としては、三叉神経主知覚核に投射します。

【各論・感覚器系(2)】平衡感覚器の同定

外側半規管と前半規管、および球形嚢と卵形嚢を区別していらっしゃいますが、バーチャルスライド上でどう見分けてますか。 という質問がありました。 3つの半規管や2つの耳石器は本質的に同じものがそれぞれ3つ、2つあります。従って見た目では区別できま…

【各論・感覚器系(2)】人工内耳手術

人工内耳はどこに埋め込むのでしょうか という質問がありました。 人工内耳手術は耳の後方から行います。乳様突起内部が空胞状になっていて、乳突蜂巣と呼ばれていることを思い出してください。これは中耳に繋がっていて、ここから蝸牛に電極を挿入します。…

【各論・感覚器系(2)】バレリーナはなぜ目が回らない?

バレリーナなど、回転しても目が回らなくなるしくみというのは、三半規管膨大部で生じる求心性のインパルスが減少するということでしょうか。 という質問がありました。 三半規管など前庭系の機能は身体の運動を適切にモニターすることであり、目が回った状…

【各論・感覚器系(2)】加齢性難聴の特徴

年をとって耳が聞こえにくくなる時は、高い音から聞こえにくくなるということを聞いたことがあるのですが、なぜですか。 という質問がありました。 おっしゃるとおり、加齢性難聴は高周波数の音から起こります。40歳くらいの人は15-20kHzの音を聞き取ること…

【各論・感覚器系(1)】中心窩

中心窩では血管が存在しないとありましたが、中心窩の視細胞はどのようにして栄養されるのでしょうか。 という質問がありました。 網膜を栄養する経路は2つあり、1つは網膜中心動脈を介する経路でこれは網膜の内層(第6-10層)を栄養します。外層は網膜色…

【各論・感覚器系(1)】錐体の退化

哺乳類は錐体が二種類に退化したとありましたが、それによって我々に与える影響(生存に有利・不利など)はあるのでしょうか。 という質問がありました。 自然選択の理論では、生存に有利な形質をもつ個体は繁殖により成功しやすく子孫が増え、その形質は固…

【各論・女性生殖器系】プロゲステロンによる体温上昇

どのようにしてプロゲステロンは体温を上昇させるのですか という質問がありました。 視床下部の視索前野という領域が体温調節中枢なのですが、この領域にプロゲステロン受容体が発現しています。この領域にプロゲステロンが作用することで体温が上昇します。

【総論・序論】『人体の正常の構造と機能』

人体の正常の構造と機能という教科書から写真が使われていますが、解剖学、生理学、発生学、組織学等様々な視点から書かれた教科書の様に見えました。わかりやすい教科書だと思いますか。 という質問がありました。 この教科書の良い点は 1.日本の多数の解…

【各論・女性生殖器系】胎盤の合胞体結節

胎盤において、合胞体結節はどのようなはたらきを持つのでしょうか。また、それがちぎれて母体血流に乗るというのは、古くなった細胞が回収されるというような認識でよいでしょうか。 という質問がありました。 古い話では、この合胞体結節は母体の肺血管に…

【各論・女性生殖器系】膣の分泌腺

膣は細菌の作用で酸性に保たれるとのことでしたが、膣自体に分泌腺がないということは受動的な作用なのでしょうか?腸管などのように分泌腺があれば分泌液によって細菌叢のコントロール(いわゆる善玉菌の維持)が可能かと思われるのですが、子宮頸腺の分泌…

【各論・女性生殖器系】外子宮口での上皮化成

SCJで上皮化成が起こりやすい理由としては、子宮頸部で分泌された酸や性交渉が挙げられるという認識であっていますか。 という質問がありました。 まず、子宮頸部では酸は分泌されません。子宮頸腺の分泌液は弱アルカリ性です。強い酸性なのは膣でして、これ…

【各論・女性生殖器系】なぜ卵管と卵巣は直接つながっていないのか

卵巣から腹腔内に放出された卵子を卵管が回収するということでしたが、卵巣と卵管が直接つながっていないことに意味はあるのですか。また、腹膜腔が外に交通しているという構造は危ない気がするのですが、この構造によって起こりやすい病気はあるのですか。 …

【各論・女性生殖器系】線毛の水流

前回の男性生殖器系で出てきた精巣輸出管や今回出てきた卵管にある線毛について、線毛がどのように水流を作っているのか、気になりました。やはり、遺伝子に水流の方向がコードされているのでしょうか。 という質問がありました。 まず、1本の線毛に注目す…

【各論・女性生殖器系】卵巣の白体について

白体は黄体が退縮・萎縮したものと認識しているのですが、白体は黄体の顆粒層ルテイン細胞や卵胞膜ルテイン細胞と同じようにプロゲステロンやエストロゲン、テストステロンなどのホルモンを(少量でも)分泌するのでしょうか?また、白体に確認できる核は何…

【各論・女性生殖器系】生理不順による機能層の変化

月経は28日周期という話がありますが、ストレス等で周期が安定せず 一定の頻度では月経が起こらない場合があると聞きます。 そういった場合、子宮内膜の機能層はずっと脱落せず変化が止まっているのですか? という質問がありました。 月経がなかなか起こら…

【各論・男性生殖器系】シルデナフィルの副作用

線毛と微絨毛の違いを忘れてしまいました。 シルデナフィルを使用した際に、それは海綿体の平滑筋以外の平滑筋も弛緩させてしまいますか? またそれによる副反応などは何が考えられますか? という質問がありました。 第1の質問ですが、線毛は運動性を有し…

【各論・男性生殖器系】精巣上体管の機能について

ラットの精巣上体管のスライドのところで、先生は「微絨毛は内部環境をセンシングしている」とおっしゃっていましたが、具体的にどのような情報を得ているのでしょうか。 ヒトの精巣上体管のスライドのところで、先生は「平滑筋が律動的に収縮してなかにyっ…

【各論・男性生殖器系】アンドロゲン結合タンパク(ABP)について

アンドロゲン結合タンパク(ABP)について、アンドロゲンは雄性ホルモンの総称だと思うのですが、ABPは単一のタンパク質で雄性ホルモン全般に結合するのでしょうか?それともABPもテストステロン結合タンパクといったように個々に機能が異なるタンパク質の総…

【各論・男性生殖器系】精子の形成

「精子形成にテストステロンが必須」とありますが、その理由(機序)が明確に理解できませんでした。「セルトリ細胞がFSH刺激に応じて精細胞分化を調節しており、そのセルトリ細胞に対して濃縮されたテストステロンが負のフィードバックによってセルトリ細胞…

【各論・内分泌系(2)】膵島

ランゲルハンス島はA細胞やB細胞やD細胞等が各ホルモンを分泌する内分泌腺の集まりという理解でよいですか。 という質問がありました。 その理解で正しいです。なぜ複数種類の内分泌細胞が集まっているのかというと、それぞれの放出するホルモンが互いの分泌…

【各論・内分泌系(2)】副腎髄質の内皮細胞と支持細胞

副腎髄質の内皮細胞と支持細胞は、毛細血管壁を構成しているようならば内皮細胞、髄質細胞周囲で核が小さいならば支持細胞というように、どちらであるのかを完全に同定しきるのは難しいということでしょうか。 という質問がありました。 条件が良ければ同定…

【各論・内分泌系(2)】なぜ副腎皮質と髄質は近接する?

名前は似ているけれど、副腎髄質と副腎皮質の由来が全く別で紛らわしいと思ったし、なぜ同じ場所にあるのだろう?と思いました。 という質問がありました。 有羊膜類では副腎皮質と髄質は共通の被膜に包まれていますが、魚類や両生類では、これらは分離して…

【各論・内分泌系(2)】血糖の話

なにかと糖尿病ばかりが叫ばれますが、実は低血糖の方が危険なのは、血糖値を上げるホルモンが多いことからもわかりました。 というコメントがありました。 おっしゃるとおりで、野生動物は基本的に食うや食わずなので糖尿になる心配はあまりないのでしょう…

【各論・内分泌系(2)】グルココルチコイドと脱毛・発毛

糖質コルチコイドが分泌されるとタンパク質からグルコースが作られるようになるので痩せほそると仰っていましたが、髪の毛が抜けることはありますか。どこかで聞いた気がします。 という質問がありました。 飢餓に対する応答となると、様々なホルモンが関係…

【各論・内分泌系(2)】副腎の切片の向き

バーチャルスライドの副腎の標本の切断方向がイメージできませんでした. という質問がありました。 たしかにわかりにくいですね。左上の結合組織中に多数の静脈(副腎静脈の枝でしょう)が走っていて、左端上に動脈が1本走っている(3つある副腎動脈のど…

【各論・内分泌系(2)】なぜ脂肪滴とわかるのか?

脂肪滴由来の空胞なのか、切片を作る際にできてしまう人工産物なのか見分ける方法があるのか気になりました。 という質問がありました。 空胞が生じるような標本作成処理として考えられるのは、固定時の収縮に伴うものですが、収縮の仕方に違いがあるのであ…