富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

【各論・中枢神経系】間脳は脳幹?

間脳は脳幹に含めませんか。

という質問がありました。

昔の本ではこのあたりがあいまいで、本によって異なる分類がされていたことがあります。現在は脳の発生のメカニズムがかなり明確にわかってきた結果、間脳は脳幹に含めるべきでない、ということができます。以下がその理由です。
 中枢神経系は神経管が変化してできるわけですが、その前方部が膨れて前から順に、前脳胞、中脳胞、菱脳胞、というふくらみができます。さらに、その前脳胞、中脳胞、菱脳胞にはホメオティック遺伝子の発現パターンに分節性があることから、前脳胞を(後ろから順に)prosomere p1-p3と二次前脳(secondary prosencephalon)、中脳胞は1つの分節 mesomere、中脳胞と菱脳胞の間を菱脳峡r0、そして菱脳胞を(前から順に)rombomere r1-r8と分類できます。中脳胞は中脳に、菱脳胞は橋、小脳、延髄になります。小脳を脳幹の付属物と考えれば、中脳胞と菱脳胞が脳幹を作る、と考えてよいでしょう。

一方、前脳胞の発生運命を調べると、二次前脳の一部が大脳皮質や大脳基底核になり、残りが視床下部や腹側視床、そしてp1-3は背側視床視床上部になります。そして、視床下部、腹側視床、背側視床視床上部を合わせて間脳といいます。このように、前脳胞は大脳と間脳を作るのですが、両者の境界は前脳胞の前方、後方で機械的に分けられるものではないのです(中脳胞と菱脳胞がそのまま脳幹を形成するのと対照的です)。従って、発生学的に見て間脳を脳幹に含めるべきでないといえるのです。


参考文献 Luis Puelles and John L.R. Rubenstein, Forebrain gene expression domains and the evolving prosomeric model.  TRENDS in Neurosciences Vol.26 No.9 September 2003 doi:10.1016/S0166-2236(03)00234-0