バレリーナなど、回転しても目が回らなくなるしくみというのは、三半規管膨大部で生じる求心性のインパルスが減少するということでしょうか。
という質問がありました。
三半規管など前庭系の機能は身体の運動を適切にモニターすることであり、目が回った状態はモニターがうまく行っていないということを示しています。三半規管からのインパルスが減ってしまってもうまくモニターできませんので、そういうわけではないのです。実際、バレリーナやフィギュアスケート選手はうまく体をコントロールできていますので、前庭系はうまく働いているはずです。
目が回る、というのは、前庭動眼反射によっておきた眼振が、回転が終わったあとも持続した状態です。バレリーナやフィギュアスケート選手はこの眼振をコントロールできるのです。
暗所では眼球運動は前庭動眼反射によってコントロールされますが、明所ではこれにくわえて視運動性反応という視覚情報に対して追従する動きがあります。両者が協調して運動に対する眼球運動を定めます。フィギュアスケート選手はスピンをしている際に、遠くの風景を固視する訓練を行うそうで、これによって(回転後に残る)過剰な前庭動眼反射を抑えることができるようになるのでしょう。神経科学的には、これは脳幹と小脳の神経回路の可塑的変化によって達成されると考えられます。