なぜノルアドレナリンを使って血管を拡張させないのか?
という質問がありました。
実は、骨格筋の血管にはノルアドレナリン作動性の血管収縮線維も分布しています。血管収縮線維と拡張線維は異なった活動性を示しており、両者の共同作用によって末梢血流量を微細に調節しているのです。
また、これに関して、「ノルアドレナリン作動性の血管"拡張"線維は存在しているのでしょうか?それとも拡張にかんしてはコリン作動性の線維のみなのでしょうか?」という追加の質問がありました。β2受容体は確かに一部の血管平滑筋を弛緩させますが、血管平滑筋を収縮させるα1受容体の働きのほうが強いので、ノルアドレナリン放出神経の作用は血管収縮となります。なお、ヒトでは血管拡張交感神経線維はアセチルコリン作動性ではないといわれています。このあたりの研究は進んでいないようです。
アセチルコリンもノルアドレナリンも含まない(NANC)自律神経節後線維というのは実はそれなりにあります。ネズミでは一酸化窒素作動性神経というものがその一例です。ヒトの血管拡張交感神経線維が一酸化窒素作動性かは同定されていないと思いますが、一酸化窒素作動性神経である可能性は大いにあると考えます。