富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

【総論・神経組織】灰白質と白質の分布について

脳では脳の内側に白質があって脳の表面に灰白質があるというのは、体の末梢から受けた感覚信号を軸索を伝って脳の表面に伝えていき(内側に白質がある理由)、それを樹状突起を持った細胞体が軸索からシナプスによる伝達をしている(外側に細胞体が多い灰白質がある理由)ということなのでしょうか?

という質問がありました。

まず、脳の灰白質が外側、白質が内側というのは脳の一部の特徴に過ぎません。灰白質が外側に出ていく領域は大脳皮質、小脳皮質、上丘のような限られた部位で、脳幹や脊髄では基本的に脳の表面に白質があり、脳の内部に灰白質が塊を形成します(これを神経核という)。
脳の内部に灰白質、つまり神経細胞体が集積するのは発生学的な理由です。脳の内部には脳室や中心管という空洞がありますが、この空洞に面した部分で神経細胞が作られるので、生まれた神経細胞があまり移動しない場合は脳の内部に神経細胞体が集積することとなります。脊髄の構造はこのような基本的なプランに近いものです。
では大脳皮質ではなぜわざわざ細胞が脳の表面に移動していくのか、という疑問が生じます。これは「皮質」という層構造を持った神経回路を形成するのに適しているからです。皮質の構造については講義で述べましたが、層ごとに異なる入出力を持っていて、層をまたぐ樹状突起を持った細胞が情報を統合する、というのがその大まかな機能です。