富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

【総論・軟骨・骨】弾性線維の染色について

講義で弾性線維はHE染色では染まらないとありましたが、今回の喉頭蓋のHE染色の画像では紫色に染まっているように感じました。また、弾性線維はエラスチンというタンパク質から構成されているものであるのに、一回目の講義では多くのタンパク質は+に帯電しているために、エオジンによってピンク色に染色されると説明されていたので、矛盾が生じました。そこで、エラスチンはタンパク質であるが、+に帯電しているわけではないのではないかと考え、エラスチンの分子構造からはどちらにも帯電していないと考えられたのですが、HE染色の画像とオルセイン染色の画像を比較すると、HE染色では紫色に染まっているように見えたので、-に帯電しているのではないかと思いましたが、どのように考えればいいのかわかりませんでした。そもそもなぜ多くのタンパク質が+に帯電していると言えるのでしょうか?それはあるタンパク質を構成しているアミノ酸の残基にもよると思うのですが...

という質問がありました。

おっしゃるとおり、「すべての」タンパク質が+に荷電しているわけではありません(講義資料にもそのようには書いていません)。20種類のアミノ酸の分類法を思いだすとわかるように、アミノ酸にはさまざまな側鎖があります。その側鎖の構成によってタンパク質の電荷が決まってくるわけです。具体的にはリジンやアルギニンのような、アミノ基が側鎖にあるアミノ酸を多く含んでいるとエオジンに染まりやすくなります。逆にグルタミン酸のようなカルボキシル基が側鎖にあるようなアミノ酸を多く含んでいるとヘマトキシリンに染まりやすくなることとなります。
今回のHE染色標本で弾性線維がよく染まっている理由は不明です。組織学の教科書で、HE染色で弾性線維が染まってしまっている例もあるので、このような現象は起こりうることで、何らかの標本処理の条件(固定など)が影響している可能性があります。(固定はタンパク質や核酸に含まれるアミノ基を架橋するので、固定の度合いによってHE染色の染色性に違いが生じることが考えられます。)