富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

【総論・結合組織】なぜ静脈は動脈よりも太いのか

なぜ臍動脈の内腔は小さく、臍静脈の内腔は大きいのでしょうか。

という質問がありました。

身体の多くの場所で、動脈と静脈は伴行しています。そして、多くの場合、動脈に伴行する静脈は動脈よりも太いです。組織学各論で学びますが、静脈と動脈の壁の厚さがかなり違うのがわかると思います。これは動脈壁に多くの平滑筋や弾性線維が含まれているからで、このため動脈の内圧は常に高く保たれています(これが健康診断で計測する「血圧」)。動脈の末端部分、細動脈や毛細血管で血管径が急に狭くなり、抵抗が高くなるので血圧と血液の流速が急速に低下します(物理を学んだ人は、オームの法則を思い出してください。)。静脈では壁が薄いため、壁が伸展しやすく、内圧は極めて低く、血液の流速も低く保たれるので、大量の血液を蓄えることができます。このため静脈のことを容量血管と呼ぶこともあります。血液を大量に蓄えているため、内腔も大きくなる、というのが答えです。
余談ですが、静脈からの出血はかなりの量の出血でも危険な状態になりにくい一方、動脈からの出血は速やかに処置しないと危険である理由は上の文章からわかります。キーワードは、血圧の維持です。血圧がある程度高くないと臓器に酸素や栄養を供給できないのです。