富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

【総論・軟骨・骨】骨粗鬆症の性差

骨粗鬆症はなぜ男性よりも女性の方がかかりやすいのですか。

という質問がありました。

まず、骨粗鬆症になりやすいのは「閉経後」の女性です。閉経後の卵巣では性ホルモンの合成が起こらなくなります。つまり性ホルモンが骨の維持に関係しているということです。
講義スライドに破骨細胞と骨細胞の活性の調節にエストロゲン(女性ホルモン)が関わっていると書かれていますね。エストロゲンは様々なサイトカインの産生を制御することで骨細胞(骨芽細胞)の骨合成を高め、破骨細胞の骨分解を抑制するように働きます。したがってエストロゲンの量が低下すると骨を分解する方にバランスが傾き、骨がすかすかになるのです。
じゃあ男性は?という疑問が出てきます。実はエストロゲンは女性ホルモンといいますが、男性でも分泌されています。(男性ホルモンも女性の身体で分泌されます) 男性には閉経はないのでエストロゲンレベルの急激な減少はなく、骨粗鬆症にはなりにくいわけです。

 

エストロゲンは骨芽細胞と破骨細胞に直接作用し、破骨細胞の働きを弱めるほか、免疫細胞のサイトカイン放出を減らすことで、破骨細胞が新たに分化するのを防ぐ働きがあります。閉経後エストロゲンが減ることで、破骨細胞の働きが強くなり骨の分解が促進されて骨が弱くなります。
では、もとよりエストロゲンの少ない男性はなぜ骨粗鬆症になりにくいのか、という疑問が出てきます。男性ホルモン(アンドロゲン)自体にある程度の骨の保護作用があるうえ、アンドロゲンは酵素の働きでエストロゲンに変換されるため(女性ホルモンは男性の身体で作られていますし、男性ホルモンも女性の身体で作られています)、男性の体内ではある程度のエストロゲンの濃度が確保されているためだと考えられます。