富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

【総論・結合組織】固定細胞と自由細胞について

Ross組織学(原書第7版)p.174〜175の「定住型細胞」と「遊走型細胞集団」として分けているものと、標準組織学総論(第6版)p.130の「固定細胞」と「自由細胞」として分けているものに多少の違い(特にマクロファージと肥満細胞において)があるのですが、Rossの言っている「定住型細胞」と標準組織学の言っている「固定細胞」、およびRossの言っている「遊走型細胞集団」と標準組織学の言っている「自由細胞」は意味上の違いなどあるのでしょうか?

という質問がありました。

教科書を持っていない人のため、説明しますと
標準組織学での分類は、
 【ほとんど動かない】固定細胞:線維芽細胞と脂肪細胞
 【遊走能力をもつ】自由細胞:マクロファージ、樹状細胞、リンパ球、形質細胞、肥満細胞、好酸球
ROSSでの分類は、
 【あまり動かない】定住型:線維芽細胞、脂肪細胞、マクロファージ、肥満細胞、成人型幹細胞
 【よく動く】遊走型:リンパ球、形質細胞、好中球、好酸球、好塩基球、単球
です。
結論から言うと、「よく動く」遊走型はすべて血液に存在する血球のうちの白血球に分類され、血流に乗って全身を移動し、血管壁を通り抜けて結合組織に入り込む能力を持ったものです。マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞は白血球と同じく造血系幹細胞に由来していて、その中には血流に乗ってやってきた白血球が分化したものも含まれています。だが、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞に分化したあとは組織内にとどまり、あまり動かなくなる(全く動かないわけではない)ため、定住型と分類されているわけです。(ただし、異物を貪食したマクロファージや樹状細胞はリンパ節に遊走して抗原提示を行うため、この遊走、定住という概念を厳格に捉える必要はありません)