富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

【総論・上皮組織】パラクリン・オートクリンの意義

オートクリンシグナリングはどのような目的で行われるのか疑問に思いました。自身に放出するのなら細胞内で完結させるのではだめなのだろうかと疑問に思いました。

という質問がありました。

まず、重要なのは、周囲の細胞もそのシグナル分子に対する受容体をもっていることが多く、オートクリンする細胞はパラクリンも同時にしていることになります。

いくつか意義が考えられます。
1.ある細胞がシグナル物質を出した際、周囲に(パラクリン)として働かせるついでに自己に対するシグナル(オートクリン)としても働かせることができる。
2.フィードバック制御としての意義:自分の出すホルモンに対する比較的親和性の低い受容体が発現していて、その受容体が活性化したときホルモン分泌が抑制されるような機構があれば、ホルモン分泌が過剰になったときに抑える仕組みができる。

もう少し詳しく説明しましょう。

例えば、これが細胞の生存にかかわる栄養因子のたぐいだとして、これが一定レベル存在しないと細胞が死滅する、という場合、この細胞種が一定程度集団でいるなら、パラクリンとオートクリンの相乗効果でその細胞種が生き残り、一方でこの細胞種がちょっとしかいないと栄養因子が不足してその細胞種はその場所で全滅する、ということが起こるわけです。このようにして様々な細胞種からなる組織が整然と構築されていくこととなります。
シグナル分子が作り出す構造の、更に興味深い例として、魚の縞模様があります。
大阪大学の近藤滋博士がこの問題についての第一人者で、本人による解説記事が面白いので一読をおすすめします。
https://www.fbs-osaka-kondolabo.net/post/skinpattern1
https://www.fbs-osaka-kondolabo.net/post/skinpattern2