富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

【総論・序論】「レアキャラ」の同定

講義の中で、ときに「機能がわかっていない細胞」が登場しますが、ものによってはレアキャラゆえに研究がなかなか進まないのでしょうか。そういった細胞の機能を明らかにするために、どのような手法が一般的にとられるのでしょうか。

という質問がありました。

例えばホルモン分泌細胞を例に取ると、過去の研究では、ホルモンを抽出するために、屠殺場でウシとかブタの臓器を大量にもらってきて、そこから微量のホルモンを抽出する、といった極めて能率の悪い方法を使っていましたから、「レアキャラ」(数の少ない細胞種)については何も言えなかったわけです。
分子生物学の発展により、ホルモン分子そのものでなく、そのmRNAをとってくることができるようになり、すりつぶした臓器のmRNAの集合体であるcDNAライブラリを作ることでより微量の発現遺伝子についても研究できるようになりましたが、非常に少数の細胞の発現遺伝子は埋もれてしまってやはりうまくいきません。そこで、特定の細胞を濃縮してそれのmRNAを抽出する方法が開発されていますし、近年ではシングルセルRNAシーケンスといって、個々の細胞に背番号を付けて、それぞれの細胞に含まれるすべてのmRNAの配列を次世代シーケンサーを使ってとにかく読む、という方法で極めて少数の細胞についても遺伝子発現全体を知ることができるようになってきました。これからは教科書に載っている機能不明細胞の機能がどんどんわかってくるかもしれませんね。