富山大学 システム機能形態学研究室 Systems Function and Morphology Lab., University of Toyama

音を認知する神経回路の構造を研究しています。 We study the neuronal circuitry for sensing sounds.

組織学Q&A

【各論・消化器系(3)】粘膜筋板の作用について

前回から今回にかけて臓器に存在する筋肉を観察しましたが、臓器の運動を行うのは前回なら内輪外縦の筋肉で、今回なら空腸において粘膜固有層に混じる平滑筋だったと思います。となりますと、粘膜筋板の必要性は何なのでしょうか? という質問がありました。…

【各論・消化器系(3)】上皮細胞とは

胃の表層粘液細胞も上皮細胞の一種なのでしょうか。 という質問がありました。 短い答えは「そうです。」です。腸管の内腔とその延長線上の空間に接した細胞はすべて腸管上皮細胞が分化したものです。ですから、消化管の内壁以外にも、分泌腺やその導管はす…

【各論・消化器系(3)】テニスコート

「小腸の表面積はテニスコート一面分」 という呪文を幼少期から聞かされてきたわけですが、どのように算出したのでしょうか。 という質問がありました。 このような計算は概算ですから、非常にざっくりと計算しているはずです。つまり、細胞1個あたりの微絨…

【各論・消化器系(3)】上皮の部位による違いはなぜおこる?

胃十二指腸移行部や直腸肛門移行部において、発生時にどのような分子メカニズムが生じていたのか気になります。 という質問がありました。 簡単にPubMedで調べたところ、そのものズバリの総説を発見しました。『Molecular analysis of endoderm regionalizat…

【各論・消化器系(3)】M細胞は多核か?

M細胞ですが、多核に見えました。単核だと思っていたので、疑問に思って教科書を読んでみたのですが、よく分かりませんでした。 という質問がありました。 講義資料の写真の細胞境界が不明瞭なので、この写真から何かをいうのは難しそうです。論文を検索して…

【各論・消化器系(3)】食品中の脂質量

食事は基本的に糖類とタンパク質は一定量含まれていて、脂質は食品の種類によって量が異なるイメージがあります。「食後30分、油を多く含んだ食事で膨大部括約筋が弛緩、胆汁を放出」とありますが、食品中の脂質量はどこで測っているのでしょうか? という質…

【各論・消化器系(3)】M細胞の形状

M細胞は袋状になっているのですか? という質問がありました。 薄い壁を作っているようです。袋状、というイメージでも間違いでないでしょう。

【各論・消化器系(2)】胃の表面の保護

表層粘液細胞の出す粘液の作用が何か気になり調べたところ胃そのものを胃酸から守る働きと知りました。そこで質問なのですが、①表層粘液細胞の出す粘液の働きはおもに胃酸からの胃の保護なのでしょうか?②胃の表面の保護は表層粘液細胞と副細胞によって行わ…

【各論・消化器系(2)】腺癌

講義資料に腺に癌が見られるとあったが、どのように判断したのか気になった。 という質問がありました。 バレット食道の項目ですね。 バレット食道とは、胃酸の逆流によって上皮化成がおこり、重層扁平上皮が粘液腺の上皮(胃の噴門腺と類似する)に変化した…

【各論・消化器系(2)】胃底腺の腺体部を構成する細胞について

講義スライドで腺体部には壁細胞の他、主細胞が存在すると記載されています。しかし、標本では、腺体部には壁細胞と副細胞が存在するように見えます。このことを踏まえると、線体部は「主に壁細胞が存在する領域」で、そのほか、構成する細胞が「副細胞→主細…

【各論・消化器系(2)】胃酸の中和の話 その2

胃酸に関して、壁細胞の放出した塩酸の大半はゲルに中和されずに胃の内容物と混ぜ合わせられることになるとありましたが、これはゲル状だと中和しないということでしょうか?それともゲル状だから中和が起こっても表面だけで、すべて中和されることははない…

【各論・消化器系(2)】上皮化成はなぜ悪い

粘膜が上皮化成を起こし、胃と同じ腺円柱上皮に変化を起こした状態であることは理解できましたが、どうしてそれが癌に移行する可能性が高くなるのかという点がわかりません。ご教授いただけるとありがたいです。 という質問がありました。 これについては、…

【各論・消化器系(2)】胃腺を構成する細胞の分化

胃腺において、峡部で細胞が作られるとありましたが、峡部に幹細胞があるということですか。また、あるとしたら峡部の上下で別のものに分化するわけですが、正しく分化する因子にはどのようなものが挙げられるのでしょうか。(例えば、峡部の上側に壁細胞が…

【各論・消化器系(2)】副細胞の染色性

胃腺において、副細胞の細胞質は染まらないとありましたが、アルカリ性の粘液を分泌する副細胞は重炭酸イオン(無機物)に富み、タンパク質が他の細胞に比べて少なく、エオジンで染まらないという認識であっていますか。 という質問がありました。 粘液はそ…

【各論・消化器系(2)】基底顆粒細胞

胃腺の模式図で、胃腸内分泌細胞が管腔に接しているように見えたのですが、実際はROSS組織学P575のように、基底膜側にあるということでしょうか。 という質問がありました。 腸上皮の内分泌細胞(基底顆粒細胞)は基底膜側に物質を分泌するので、そちらの側…

【各論・消化器系(2)】ダメージとがん化

逆流性食道炎で食道の上皮がダメージを受けることは知っていましたが、単なる炎症だと思っていたのでがんへの移行確率が上昇することは初めて知りました。 という質問がありました。 結局がん化の原因は細胞分裂時のDNAの複製ミスにあります。したがって、細…

【各論・消化器系(2)】アルカリ性粘液

胃腺でアルカリ性の粘液を分泌するのに、どうして壁細胞から分泌された塩酸は中和されて無効化しないのですか? という質問がありました。 もっともな疑問です。ここでアルカリ性粘液を出す細胞は何か、というと、副細胞という粘液分泌細胞です。粘液はムチ…

【各論・消化器系(2)】細胞の寿命の計測法

「○○細胞の寿命は××日」という表現はテキストなどでよく見かける表現ですが、どのように測定されるのですか? という質問がありました。 古典的には、放射性同位体標識塩基を投与することで、分裂中の細胞を放射性同位体で標識し、標識された細胞がどこに移…

【各論・消化器系(1)】末梢神経の再生について

中耳の手術で鼓索神経を切断したあと、味蕾が再生するとのことですが、鼓索神経自体も回復(再生?)するのでしょうか? という質問がありました。 はい、鼓索神経に限らず、再生するのが末梢神経の特徴です。 ですから、例えば事故で腕を切断したとしても、…

【各論・消化器系(1)】赤唇領域に関して

「赤唇領域は血管を含んだ結合組織で支えられた重層扁平上皮で覆われており,そのためこの領域は赤色を呈する (Abraham L. Kierszenbaum, Laura L. Tres. 組織細胞生物学. 内山安男訳. 第5版, エルゼビア・ジャパン, 2022,773p.)」 口唇が赤い動物はヒトだけ…

【各論・消化器系(1)】線条導管の意義

舌下腺にある線条導管が、耳下腺や顎下腺にある線条導管よりも短い理由が講義動画を見ましたがわかりませんでした。粘液腺には線条導管は見られないのでしょうか。 という質問がありました。 線条導管は豊富なミトコンドリアによって作られるATPを使ってイオ…

【各論・消化器系(1)】漿液半月について

漿液半月ができる過程において,粘液細胞が標本作成の過程で膨張するため,漿液半月が形成されると,ジュンケイラ組織学で表記されていました。なぜ,粘液細胞のみが膨張するのでしょうか??粘液はリゾチーム,漿液はアミラーゼが主に含まれることが関係し…

【各論・消化器系(1)】口腔粘膜の構造

口腔粘膜のところで粘膜固有層という言葉が出てきましたが、粘膜固有層とはどの部分ですか。また、シャーピー繊維とは異なりますよね? という質問がありました。 総論も復習してほしいですが、上皮の下の疎性結合組織のことを粘膜固有層といい、免疫細胞が…

【各論・消化器系(1)】なぜ口唇に鋭敏な感覚があるのか

生理学でもヒトの感覚のホムンクルスを学習しましたが、口唇が鋭敏な感覚を持つことは、ヒトにとってどのような意義があるのでしょうか。やはり社会的動物としてキスが大切なのでしょうか? という質問がありました。 口唇には口輪筋などの表情筋があり、柔…

【各論・消化器系(1)】唾液腺の機能

各種唾液腺の導管(3種)の形態的な違いが生理学的にどのような影響を及ぼすのかが気になります。 という質問がありました。 耳下腺は漿液腺、舌下腺は粘液腺、顎下腺は混合腺なわけで、粘液のほうは粘膜を保護したり、嚥下の際に食塊がなめらかに消化管を滑っ…

【各論・消化器系(1)】歯胚について

乳歯が作られる際にエナメル質が完成するとエナメル芽細胞はなくなると思うのですが、永久歯に生え変わる時にエナメル芽細胞は再度生まれるのでしょうか。 という質問がありました。 実のところ、胎児の段階で(つまり乳歯が萠出するまえ)、乳歯の歯胚の下…

【各論・消化器系(1)】味蕾の再生

味蕾は再生するということですが、鼓索神経が切断されると鼓索神経が繋がらないと味覚が伝わらないのではないのですか? という質問がありました。 そのとおりです。というより、味蕾が再生するためには、舌乳頭への神経支配が再生する必要があり、味蕾が再…

【各論・消化器系(1)】味蕾の働き方

講義資料の写真では味蕾は葉状乳頭の間にしか存在しないように見えたのですが、食べ物は乳頭の間に入って初めて味が認識されるということですか?固形のものの場合、唾液と混ざったり、液体成分が出てきたりしない限り味を感じないと言うことですか? という…

【各論・消化器系(1)】鼓索神経の再生について

鼓索神経の再生の臨床研究について、これは鼓索神経を切断した後、またつなげたのでしょうか? それとも、再生した味蕾はほかの神経(舌咽神経?)を通して味覚を伝えているのでしょうか? という質問がありました。 鼓索神経は細いので、針と糸でチクチク縫…

【各論・消化器系(1)】漿液半月が人工産物であることの証明

どのような経緯で漿液半月がアーティファクトであるとわかったのですか? という質問がありました。 通常の組織標本作成では、サンプルを固定液の中に漬け込み固定するのですが、この際に腺房全体が縮む一方、粘液腺は水分を吸収して膨潤し、結果として漿液…